帰らぬ人

5/23
前へ
/23ページ
次へ
「どうしました?」 僕は、渇いた口を開き、聖徳太子さんに聞いた。 「どうやら、あの女の取り調べが終わったようです」 「そうですか…………」 大事な事なのは、わかっているが、全然頭に入ってこない。 聖徳太子さんは、足を進め僕に歩み寄り、そっと手を置いた。 「そんなに気落ちしてると、体調に影響しますよ。 少しは元気出さないと」 手のひらで僕の髪をワシャワシャとし、くしゃくしゃにする。 「そうですね……土方さんが生きていたら怒られますよね」 「あなたは、一番隊の隊長なんですから」 「はい……」 「副長、安らかに眠っていますね」 そう言って聖徳太子さんは、棺に眠る土方さんの顔を覗き込む。 「聖徳太子さんは、土方さんが死んで本当に悲しいんですか?」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

296人が本棚に入れています
本棚に追加