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手に確かな感触が伝わり、殴られた春雨は宙に舞い上がり、吹き飛んでいく。
今ので顔面の骨に加えて、首の骨が折れたはずだ。
呆気ないな……。もう終わりだ。
春雨は仰向けの状態で背中から綺麗に落下し地面に打ちつけられた。
「!」
「くっ……命を犠牲に……いくら……戦……いが好きで……も……真似できないア……ルよ」
信じられない。立ち上がりこそしないものの、僅かに口が動き声を出した。
僕は冬冷から菊一文字を抜き取って、春雨に近寄った。
頭に被せていたローブがはだけて、やっと顔が見えるようになった。
そこにはまだ成人にもなってないだろう、幼さを残す青年の顔があった。
顔つきを見ればわかるが、ずっと何かと戦い続けてきた奴の顔だ。辛かったに違いない……。
だけど同情はしない。
僕は先に進まなきゃいけないんだ。
春雨はさらに喋り続ける。
「まさか……こん……なとこ……ろで……。でも……戦地で……死ぬなら……本望アルよ」
「言い残す事はもうないか?」
春雨の瞼がゆっくり閉じる。
僕は握り締めた菊一文字を春雨に全力で振り下ろした!
ズシャ――――――ン!!!
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