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俺は秋醒に向けていたゲベール銃を下げた。
「ありがとう。君は優しい人だと思っていたよ」
秋醒はさっきまでの真剣な表情を崩して、小さく微笑んだ。
今度は目が笑っていた。
その微笑みは、汚れたものを何も感じさせない美しさがあった。
「いけっ!!!」
敵に背中を見せる事なんて、有り得ない事だが、俺は目を背けた。
くそっ! なんでかわからないけど、目頭に熱いものが込み上げてきやがる!
後ろから、フィフスの声が聞こえてきた。
「ありがとう。人間……すまなかった」
謝るな!
どんどん液体が溢れて、瞼を瞑ると涙が零れた。
鼻の奥が熱くて、口の中が渇いていく。
俺は何で泣いてるのかが、わからなかった。
嬉しい涙でも、悔しい涙でも、悲しい涙でもない。
「ねえ! また君には逢いたいな! ありがとね!」
秋醒の声が耳に届いてきた。
俺はもう反応する気力さえなかった。
「でも、一応言っとくね。さよなら」
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