狩人-2

20/21
前へ
/23ページ
次へ
俺は秋醒に向けていたゲベール銃を下げた。 「ありがとう。君は優しい人だと思っていたよ」 秋醒はさっきまでの真剣な表情を崩して、小さく微笑んだ。 今度は目が笑っていた。 その微笑みは、汚れたものを何も感じさせない美しさがあった。 「いけっ!!!」 敵に背中を見せる事なんて、有り得ない事だが、俺は目を背けた。 くそっ! なんでかわからないけど、目頭に熱いものが込み上げてきやがる! 後ろから、フィフスの声が聞こえてきた。 「ありがとう。人間……すまなかった」 謝るな! どんどん液体が溢れて、瞼を瞑ると涙が零れた。 鼻の奥が熱くて、口の中が渇いていく。 俺は何で泣いてるのかが、わからなかった。 嬉しい涙でも、悔しい涙でも、悲しい涙でもない。 「ねえ! また君には逢いたいな! ありがとね!」 秋醒の声が耳に届いてきた。 俺はもう反応する気力さえなかった。 「でも、一応言っとくね。さよなら」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加