狩人-2

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殺気は全くない……。 その言葉を聞いてから、奴らの声が聞こえてこなくなった。 そっと振り返ると、溝の向こうに奴らの姿はない。 俺はバカか。敵をみすみす逃がすなんて。 戦争だぞ? これは。 考えても、敵はいなくなったんだからしょうがない。 俺は比良がいる場所へ戻った。 肩から先が無くなり、足も自慢のフライシューズもボロボロだ。 これも奴がやったんだよな。 逃がしたのは本当に正解だったのか……? 比良はうっすらと目を開いている。 「おい。生きてるか?」 俺の言葉に反応し、比良が口を開いた。 「勿論……っす!」 どうやら、まだ大丈夫そうだな。 「敵は倒しましたか?」 「……ああ」 俺は嘘をついた。でも何故か心の中は悪い嘘じゃないような気がしたんだ。 「帰るぞ。屯所がどうなってるかわからないし、おそらく戦闘中だろ。お前は卑弥呼に治療してもらって、ゆっくり休め」 「了解……っす。オラ、クタクタです」 「全く……俺もだよ」 俺は比良を背負い、フライシューズで飛び立った。
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