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奴は海岸に辿り着くなり、打ち寄せる波の中に足を沈めて着地した。
フライシューズで近づき、相手の姿が見えていく。
土の色に染まり、泥まみれになった全身。
奴が波の中へ歩く度に、足元から泥は洗われていく。
細く引き締まった身体は、先程と同じで銀色の塊。
あれに乗っていたのか?
それとも……あの形から人の姿へ変形した?
私の事など気にせずに、自分の身体の泥を落としていく銀色の塊。
私は砂浜に着地し、その姿を見守った。
月の光に照らされ、海に立つ光景があまりにも美しく、私は警戒する事すら忘れ、見とれてしまった。
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