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残った瓦礫の残骸が音を立て崩れる。
壁際から落下する瓦礫には目もくれず、皇子の視線は俺に向いたまま。
互いの視線が交差するが、視線にでさえ差を感じ、心が怯み、肌が震える。
脅えるな!
心で負けては、勝機はなくなる。
ヤマタノオロチ戦では、死ぬ間際まで俺は追い詰められた。
その時でさえ、恐怖を感じる事などほとんどなかった。
江戸に居た頃、真剣を持ったその日から死は覚悟しているし、常に隣り合わせで生きてきた。
今、圧倒的憎悪を目の前にし、俺の心は打ち砕かれる寸前にいる。
生まれて初めて感じる、戦いへの恐怖。
見下ろす景色の中に映る皇子は、どんどん圧迫してきているような気さえする。
「はあはあはあはあはぁ!」
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