天才科学者と平民

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勝つ。必ず勝つんだ! トクンっと小さく聞こえた鼓動の音……。 俺は最終形態になるスイッチを入れた。 心臓が爆発的に高鳴り、胸が張り裂けそうになる。 視界はモノクロの世界の如く、白黒に染まり、身体は自然と床へ倒れた。 身体が動かない。あとは感覚だけだ……。 伝わってくるのは、更に伸びる鬣。剥き出しになる新たに生えた牙。徐々に太くなる腕と足を銀色の毛が埋め尽くしていく。身体が巨大化し、横になった視線の高さが段々と上がっていく。 全ては感覚で見ている。 しばらくすると変形は止まり、俺は足を動かした。 大丈夫だ……。花道院に視線を向けると、俺の姿を見て唖然としていた。 ゆっくりと力を入れて、足腰を立たせた。 足裏が四つあると、やっぱり気持ち悪いな。 曲がった足を伸ばしきってから、俺は上から花道院を見下ろした。
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