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そうか。ついに決着をつけるのか……。
最後までは知らないけど、ノア様にお話は少しだけ聞かされていた。
「覚悟はできていますね?」
ノア様が僕の目を見て、確認してくる。その眼差しは、まさに自信と力と優しさで溢れていた。
「はい……僕は大丈夫です」
ノア様は表情を崩し、ニッコリ笑ってから口を開く。
「そのワンピース、贈り物でしょ?」
「はい……以前に大切な人に貰いました」
本人は忘れてしまったかもしれないけど、僕が着ている花柄のワンピースはだいぶ前に夏鮫からもらった服なんだ……。
だからいつも大事に着ていた。
『ほら これやるよ』
『え?』
『お前、こういう……なんつーか、女らしい服 持ってねえだろ?』
『キャハハハ!僕には似合わないよ』
『いいから、持っとけよ!偶然、手に入ったんだ。俺が持ってても、しょうがないだろ』
強引に押しつけるように渡してきた夏鮫の手。
『ありがとう……』
あれはいつの出来事だったろうか。日常で命のやり取りを繰り返すと、大事なことさえも忘れてしまう。
夏鮫……今、迎えに行くから。
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