電車待ち

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今日も私は駅の待合室で本を広げた。 そのうち電車が入ってきて、 ぱらぱらと人が降りてくる。 この電車を逃せば次は1時間後。 田舎の駅なので、 電車の本数は驚くほど少ない。 それでも私は、 そのまま座って本を読んでた。 「あれ?今日も逃したの?」 降ってきた声に顔を上げると、 彼が立っていた。 「うん。来たらちょうど、 電車出たところで」 ……嘘。 わざと電車に乗らなかった癖に。 「そっか。 お互い参るよな。じゃっ」 「じゃあ」 ひらひらと手を振って友達の所へ急ぐ彼に、 私も手を振り返す。 今日も会話はそれだけ。 毎日毎日、それだけの会話のために、 私は電車を遅らせてでも彼を待っている。 ……はぁーっ。 ため息をつくと、 私は本をなおしてベンチを立った。 そして今日も。 待合室で本を広げ、彼を待つ。 いつか、ちゃんと話せることを願いながら。 【終】
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