計画

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「え?」 扉を開けた先の光景を見て、まず美沙が声を出した。 仁が中を覗き込みながら口を開く。 「なんだよ。これ」 扉の向こう側には、木々が立ち並んでいた。 どこかの森の中みたいだ。 茎の中に、その景色が入っているみたいで奇妙な光景ということだけは間違いなかった。 まず扉を開けた仁が、警戒しながらも先にその中へ入っていく。 それに続き、俺、美沙、杏奈も扉を通過した。 「感覚がおかしくなるな」 仁が辺りを見回しながら言った。 振り向くと、大木に扉が取り付けられていて、向こう側にはさっきまで居た花畑が広がっている。 ここは何なんだ? 辺りを見渡してみると、狭い間隔で木々が立ち並び、陽を遮っているせいか薄暗かった。 「見てみろよ」 俺はそう言いながら、視界に映った物を指さした。 木々に沿うように続く道の先。 開けた場所のせいか、そこにだけ日差しが差し込んでいる。 その上には、木造の小さな家が建ってた。 「誰かの家ー?」 美沙が不思議そうに呟くと、杏奈が冗談めいた口調でこう言った。 「こんなところに人なんて住んでるのかしら」 その時、光刀が俺の心に語りかけてきた。 『気を付けろ。あの家の中に信じられないほどの実力者がいる。向こうは君たちの存在に気が付いているみたいだぞ』 俺は反射的に、光刀の柄を握った。
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