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輝きは、段々と黒く染まった刀身に浸食を始めた。
漆黒の闇を照らすかの如く、黒色から白色の輝きを取戻し始める光刀。
「これは……」
王龍は険しい表情で、光を放つ光景を見ている。
「光刀!」
俺は光刀に向かって、喉の奥から声を出して名前を呼んだ。
白色が広がり、黒色の面積がごく僅かになった時、心の中で微かな声が聞こえてきた。
『君か……』
聞こえるのか!?
光刀。
『私は何をしていたんだ? 敵が黒い力を放ったところまでは覚えているが……』
今度は間違いなかった。
確かに光刀の声が心の中で響き渡っている。
黒い部分が完全に消えて、刀身は元の白い輝きを取り戻した。
「ありえん! 光が闇の力を消すなど……。しかも自力で……考えられん事じゃ」
声を荒げる王龍。俺はその雰囲気を警戒して、屈んだ状態で光刀の切っ先を王龍に向けた。
白煙が俺を包み込み、防御壁を作り出していく。
王龍は切っ先を向けられても動じることはなかったが、何かを覗くように光刀をじっと見据えていた。
「なるほど。わしが知らんわけじゃ。黒田の奴、こんな面白いことをしておったのか」
口元を弛ませて、王龍は深い笑みを浮かべた。
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