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しかし、次に聞こえてきたのは異様なまでの鈍い音だった。
私の肉を裂く音でも、脳が吹き飛ばされた音でもない。
私は、少し怯えながら目を開いて状況を確認した。
眼前で、黒い影が浮くように停止している。
向こうがあえて止まったと言うよりは、壁にでもぶつかったみたいな感じがした。
「これは……」
さらに黒い影は、何かに包まれてように段々と凝縮されていく。
凄まじい光景だった。
どこかに閉じ込められて全方位から圧力がかかっているようだ。
例えるならば、箱の中に入ってその箱が段々と小さくなっていってるみたいな。
私はその光景に戸惑いながらも、この状況を頭の中で整理してみた。
この能力を私は知っている……。
目に見えない物で相手を圧倒するその力は……私が知る限りでは一人しかいない。
見えない粘土……。
壁を作り出して私たちを守ってから、相手に攻撃を仕掛けたんだ。
でも、その人物が私たちを守ってくれるなんて思いもしなかった。
いや、もしかしたら何か理由があって私たちを助けてくれたのかもしれない。
「ったく。いつからそんなに弱くなったんだよ」
そんな乱暴な言葉を吐きながら、木から降り立って地面に着地するその人物。
私は声がした方向にそっと視線を向けた。
そこに居たのは、私が思った通り……。
ユキヤだった……。
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