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あの速さと威力に対応する術を私は持っていない。
私の能力では、どうすることもできないだろう。
それなら……。
答えは簡単なことだ。
動きが遅い私でも、今から走り出せば二人の壁となることぐらいはできる。
この身を使って……!
私はPCを放り出して、二人の元に向かって走った。
幸いなことに、私よりも敵の方が二人から距離がある。
動きは敵の方が速いが、私が間に入るのには十分な距離だろう。
だから……!
ルイは自分の身を犠牲にしてでも、空を守るつもりなんだろう。
空を本物の母のように抱き締めて、覚悟を決めている。
この二人は死なせちゃいけない……!
ヒカル、ルイ、空には生きて、外の世界に出てもらわないと!
私は二人の前に立ち、敵の方を向いて手を大きく広げた。
黒い影は刃みたいに鋭くなり、私の元に迫ってくる。
いつ進む道を間違えてしまったのだろう。
私たちは、自分たちが正しい道を進んできたと確信していた。
星屑が集まって黒い星となるはずが、いつのまにか星屑がまた散ってしまったんだ。
だから……せめて、この三人だけは……!
視界を埋め尽くす黒い影。
私は全てを投げ出して諦めて、そして願いを込めて瞼を強く閉じた。
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