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「何をだ……?」
ルイが鋭い目つきで空に訊いた。
「みんなを守りたいって思った」
私とルイはその言葉に耳を傾けながらも、服の袖で自分の口と鼻を塞いだ。
一瞬だけど、僅かに甘い香りがした。
おそらく催眠作用のある効果が含まれた目に見えない何かだろう。
自分の切り札は誰にも教えないべきだ。
だからこそ切り札になる。
そう教えたのは私たちだけど、まさか能力の本質までを隠しているとはさすがに予想していなかった。
「よく気付いたね。さすがルイお姉ちゃんとまみお姉ちゃん」
空は少し笑みを浮かべながらそう言った。
その笑みにかつてのあどけなさは残されていない。
大人が放つ憎悪そのものだった。
「僕はみんなを裏切ったわけじゃない。僕はみんなを守りたいって思ったんだ。僕にとってブラックスターは永遠に必要なんだ。だからこそ、みんなには生きててもらわなければいけない。卑弥呼お姉ちゃんは残念だったけど、他は殺してないでしょ? シャルキーお姉ちゃんも、ヒカルお兄ちゃんも……」
守りたい……?
それなのに、仲間のことは傷つけるの?
いや、そもそも何から守るの?
空は狂ってしまったかのように、自分の世界に浸りながら話し続けていた。
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