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「何それ……」
私は、ユキヤの言葉に唖然としながらそう口にした。
「それにしても……」
ユキヤは、ヒカルの方を振り向いて鼻で笑う。
「無様だなあ。ヒカル。昔のお前だったら、もっと完璧に色んな事に対応してたのによ」
ヒカルの腹部から流れる血は、止まる気配がない。
当然だろう。あれだけ深く刺されたんだ。
いくらヒカルでも、こんな深手を負ってたら死んでしまうだろう。
それに……。
「病のせいか? ちげえだろ。くたくたのふりすんなよ」
私が予想していた事をずかずかと口に出して、ユキヤはさらに大きな声で笑った。
「せっかく会いにきてやったってのに、随分とお粗末なチームになったもんだ。でも今は……」
見えない粘土で圧縮された黒い影が、激しく暴れている。
段々と粘土が弛みはじめて動く幅が広くなり、黒い影の動きが大きくなってきた。
黒い影は、見えない粘土を突き破ろうとしている。
破られるのはどう見ても時間の問題だった……。
「あれを何とかしなくちゃいけねえな」
ユキヤの全身から放たれる体内エネルギー。
「空。俺の姿をしっかりと見ておけ」
頭の中で警報が鳴り響いた。
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