500人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「ついてこい!」
ユキヤはヒカルを担ぎながら、風の如く木々の間を華麗に縫っていく。
私とルイは、その背中を必死に追いかけ始めた。
背後からは、いくつもの黒い影の威圧感を覚えるが、私はユキヤを追うと同時にPCの操作に集中した。
その刹那、背後で耳を裂くような鈍い音が響き渡る。
振り返って何が起きたのか確認しなくてもわかる。
この音は聞き慣れてるわ。
急に懐かしさが込み上げてきた。
黒い影が、ユキヤの見えない粘土に衝突したんだ。
ブラックスターが逃走する時、最も適した能力を持っているのがユキヤだった。
やばい時は、この方法をよく使った。
見えない粘土を地雷のように大量配置して、障害物としての役割を果たさせる。
ユキヤの走った道を辿れば、私たちは粘土にぶつかる事がないからね。
私はPCを調査モードのみにした。
背後に居る敵の数は13。
これならユキヤの見えない粘土があれば、振り切ることができるかもしれない。
その事を告げるために顔を上げようとした時、もう一度画面を見た。
そして、凝視した。
前方に知らない体内エネルギーが表示されていた。
凝視した理由はそれだけじゃない。
信じられない現象だったからだ。
私は画面から視線を外して前を見た。
ヒカルを担いで先頭を走るユキヤ。
知らない体内エネルギーの場所は、あの体の中だ。
最初のコメントを投稿しよう!