504人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
俺は、女の言葉には何も答えなかった。
すると、女は煙りを大きく吐き出して苛立ちながら口を開いた。
「あらぁ。シカトするなんて、随分と失礼じゃなあい。いい? それなら私の名前を教えてあげるわ。アニーよ。自分を殺す人間の名前はしっかりと覚えてなきゃ」
ゾクッと背中に寒気が走ると同時に、女はにやーっと嫌な笑みを浮かべた。
アニー……か。
その直後、アニーは吸い殻を宙に投げると、地を蹴って襲い掛かってきた。
速い、そう思った時には眼前まで迫っていた。
仄かに香水の匂いが漂ってくる。
アニーは、手の平に命力を集めて、それを解き放つ体勢に入った。
さっきの攻撃を、今度はそのまま俺にぶつけるつもりか。
俺は能力【獅子御輿】を発動して、自分の体を獣化させた。
脚の筋肉を使い、アニーから逃れるために上へ跳ぶ。
俺は、数メートル上まで跳ぶとアニーをよく見て観察した。
アニーは、まだ俺を捉えきれなかったことには気がついていない。
どうやら速さは俺の方が勝っているみたいだ。
自信があるのはそこだけしかないけどな。
だけど、迂闊には手を出さない。
相手の隙を徹底的に探して、確実に一撃で仕留めるんだ。
最初のコメントを投稿しよう!