黒い星として-2

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俺は、女の言葉には何も答えなかった。 すると、女は煙りを大きく吐き出して苛立ちながら口を開いた。 「あらぁ。シカトするなんて、随分と失礼じゃなあい。いい? それなら私の名前を教えてあげるわ。アニーよ。自分を殺す人間の名前はしっかりと覚えてなきゃ」 ゾクッと背中に寒気が走ると同時に、女はにやーっと嫌な笑みを浮かべた。 アニー……か。 その直後、アニーは吸い殻を宙に投げると、地を蹴って襲い掛かってきた。 速い、そう思った時には眼前まで迫っていた。 仄かに香水の匂いが漂ってくる。 アニーは、手の平に命力を集めて、それを解き放つ体勢に入った。 さっきの攻撃を、今度はそのまま俺にぶつけるつもりか。 俺は能力【獅子御輿】を発動して、自分の体を獣化させた。 脚の筋肉を使い、アニーから逃れるために上へ跳ぶ。 俺は、数メートル上まで跳ぶとアニーをよく見て観察した。 アニーは、まだ俺を捉えきれなかったことには気がついていない。 どうやら速さは俺の方が勝っているみたいだ。 自信があるのはそこだけしかないけどな。 だけど、迂闊には手を出さない。 相手の隙を徹底的に探して、確実に一撃で仕留めるんだ。
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