黒い星として-2

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「──!」 爪の先が体に触れる瞬間、アニーの全身が消え失せた。 何かの間違いかと思って目を凝らすが、アニーの姿が消えたことは事実だった。 その証拠に、地面には血の痕がどっぷりついている。 能力……? アニーは移動系の能力を持っていたってことか? それが切り札? いや、それなら切り札にせずそっちを常用にするはず。 風刃の方を切り札にするってのが普通の考えだ。 じゃあ、何? そうか……。 ちょっと考えれば、すぐに答えには辿り着くことができた。 俺は、すぐさま辺りを見回す。 少し離れた場所には、俺が思った通りの答えがあった。 別の能力者。 そして、その人物は……。 「女相手に容赦ないのう。若造よ」 老いを感じさせる声。 ついさっきまで一緒に居た王龍が、アニーを抱えながら立っていた。 あれだけ性能が高い移動系の能力者は、他にはいないからな。 「悪いが見逃してくれないか? その代わり、わしもお前の命を見逃してやるわ」 王龍は、アニーに視線を落としながら話し続けた。 「どうせ、もうすぐ死ぬ。死ぬ前はせめて美しい花畑に囲まれながら静かに逝かせてやりたいじゃろ?」 抱えられているアニーは、絶命寸前であることには間違いない。 俺は、王龍の言葉に身構えた。
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