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────シャルキー────
何が起きたのか、予知することすらできなかった。
予知・虫の知らせ、明晰夢、あらゆる事象を体験してきたけれど、どれもいい加減なもので、私は思い込んでいただけなのかもしれない。
思い込んでいた事が実際に現実になる事はあるかもしれない。
私の場合は、他の人よりもそれが頻繁にあっただけかもしれないんだ。
それほど絶望的な気持ちに陥った。
仲間の裏切りが自分の中では信じられなかったんだ。
いや、受け入れられなかった?
自分の中では予知していたけれど、それを処理する事ができなかっただけ?
痛みを覚え、血に染まる光景を目の当たりにしながら、私はただ意識を手放して、自分の未来がどうなるか天に任せた。
このまま死ぬならば、それを受け入れて、そして生まれ変わる事を祈ろう。
だから、気がついた時、霞む視界に入り込んでくる目映い光と、全身を包み込む優しい温もりは、人間が死んだ先に辿り着く世界なのかと思ったんだ。
しかし、すぐ側から聞こえてくる声がそうじゃないのだと自覚させてくれた。
「気がついたか?」
しっかりとした女性の声。
霞む視界がだんだんと定まってきた
。
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