黒い星として-2

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「全てのテントで治療が行われている……?」 シャルアネットは私から視線を逸らしてこう答えた。 「これが私の能力だ。テントが細菌を防ぐ手術室代わりになり、私の意思通りに治療を施してくれる。数が増えるだけ、当然ながら燃費が悪くなるけどな」 見渡す限りに置かれたテントの数はやはり数十個はある。 これだけの数を一気に治療できるってこと? 一体、どれほどの鍛錬を積めばこんな事が可能になるのよ。 そして、その精度も恐ろしいほど高い。 本来なら死んでも当然ぐらいの怪我なのに、あれを治療するなんて。 シャルアネットの噂は色々と聞いてきいているけど、一番はその剣の腕前にあると言われている。 ブラックアウトの有名な刀や剣は全てシャルアネットの手中にあると言われていて、その全てを同時に操ると……。 新撰組で最強と言われていた天草四郎が、女性のリーダーについた事は疑問に思っていたけど、こういうことだったのね……。 もしかすると……。 いいえ、私の直感が言っていた。 最も優れたプレイヤーはシャルアネットだと。 シャルアネットは、優しい笑顔を浮かべてこう言った。 「シャルキー。私に手を貸してくれないか? その最強の能力で。貴方の力をぜひ役立てたい」 「しゃ……シャルアネットさん……」 私が口を開こうとすると、シャルアネットは指を口に押し当ててきた。 「まだ、自己紹介をちゃんとしていなかったからさせてくれ。私はホワイトマジックのリーダー。シャルアネット・アカイヴァー。肉親を失ったんだ。でも、その悲しみに浸る時間はない。奴らを倒す……私の望みはそれだけだ」 目の前には、細くて白い手が差し出された。
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