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こんな強引で自分のペースな人物は……今までに一人だけ見たことがある。
ヒカルだ……。
私が自分の能力で悩んでいて、ブラックアウトに誘ってくれた時もこんなに強引だった。
人が違えど、性別が異なっても……。
他にもこんな人が居るんだ……。
自分の価値観が壊れそうだった。
今まで自分はどうやって前に進んできたのだろう?
そして、それは正しいことだったのか?
私は自分の存在自体に悩みを持った。
大切な人間を守るため。
そして、大切な人間が望む物を手に入れることこそが最大に幸せだと思っていたから。
はるかちゃんが死んだのは……二宮が死んだのは……。
私は何のために能力を手に入れて、何のために牙を剥くのだろう。
「 迷うな 」
シャルアネットは私の手を強引に握ってきた。
「自分が大切だと思う者のために戦えばいい。それが人間として当然だ。だから、その者たちを救うために私に手を貸してくれればいい」
私に語りかけてくるその迷いがない大きな瞳。
その意思に私は吸い込まれそうだった。
「これで戦うのは最後……なのかな?」
今まで溜め込んでいた何かが決壊して、私の目からは堪えることのできない熱い液体が溢れてきて頬を伝っていく。
シャルアネットは、やはり迷いない瞳でこう言った。
「これで最後だ」
私はその言葉に、自然と手を握り返していた。
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