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その人物を見て、俺は唖然とする意外なかった。
あり得ない……。だけど、死ぬ間際ということもあれば、そういうこともあるのかもしれないと、妙に納得してしまう部分もあった。
急に辺りが静寂に包まれて、時が停止したような気がした。
俺とその人以外の時間は全て止まり、二人きりの世界になったみたいな。
既に、自分が死んでお迎えにでも来たのだろうか?
「随分と苦労しているみたいだな」
その人物は、ニヤリと笑い俺のことを見てそう言った。
美しいほどの長髪。頭に巻いたターバン。少し焼けた肌。
何度見ても、間違いじゃなかった。
「シンバさん……」
頭の中で声が聞こえたような事がしたのは、これまでに何度かある。
だけど、姿まで見たのはこれが初めての事だった。
「どうして、ここに……?」
生きていた?
いや、そんなはずがない。
だって、シンバさんは死んだんだから。
シンバさんは、俺の目の前で胡座を組んで座った。
「だいぶ強くなったみてえじゃねえか。ここまで来るのにだいぶ苦労しただろ?」
その声。そして、厳しい中に隠れた優しさ。
「俺は……」
何かを言おうとしたが、俺は言葉に詰まった。
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