黒い星として-2

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俺はまだ何もしていない……。 自分が決めた目標を一度も達成していないんだ。 絶望的な気持ちの中、シンバさんは真っ直ぐ俺の瞳を覗きこんできた。 「ここで諦めていいのか?」 俺は……まだ諦めたくない。 だって、まだ何もしていないから……。 でも、こんな対抗策のない敵にどうやって勝てっていうんだよ。 「ったく。情けねえ弟子だな」 シンバさんはそう言いながら大きな声で笑った。 「いいか? どんな時でも諦めたら終わりなんだよ。どんな状況にもお前は対抗策を持ってるよ」 そう言いながら、俺の頭の上に手の平を乗せてきた。 その温かい手は、やっぱりシンバさんのもので……。 「俺はやれるんでしょうか……?」 「やれる……? そんな事訊くなよ。やるんだよ。大切な事の為に前に進んでいるんだろ?」 その言葉は不思議と力を持っていて、俺は自然と顔を上げた。 そこには確かにシンバさんが居る。 「シンバさんは……」 「大切な弟子に何も残さずに死ぬわけがねえだろ。これが俺の能力。“思念”だ。お前らが絶対的なピンチを陥った時、俺の幻影を見るように残した能力だ」 「じゃあ……やっぱり……」 「ああ……悪いな」 シンバさんは、俺が見たこともないほど申し訳なさそうな顔をした。
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