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俺はまだ何もしていない……。
自分が決めた目標を一度も達成していないんだ。
絶望的な気持ちの中、シンバさんは真っ直ぐ俺の瞳を覗きこんできた。
「ここで諦めていいのか?」
俺は……まだ諦めたくない。
だって、まだ何もしていないから……。
でも、こんな対抗策のない敵にどうやって勝てっていうんだよ。
「ったく。情けねえ弟子だな」
シンバさんはそう言いながら大きな声で笑った。
「いいか? どんな時でも諦めたら終わりなんだよ。どんな状況にもお前は対抗策を持ってるよ」
そう言いながら、俺の頭の上に手の平を乗せてきた。
その温かい手は、やっぱりシンバさんのもので……。
「俺はやれるんでしょうか……?」
「やれる……? そんな事訊くなよ。やるんだよ。大切な事の為に前に進んでいるんだろ?」
その言葉は不思議と力を持っていて、俺は自然と顔を上げた。
そこには確かにシンバさんが居る。
「シンバさんは……」
「大切な弟子に何も残さずに死ぬわけがねえだろ。これが俺の能力。“思念”だ。お前らが絶対的なピンチを陥った時、俺の幻影を見るように残した能力だ」
「じゃあ……やっぱり……」
「ああ……悪いな」
シンバさんは、俺が見たこともないほど申し訳なさそうな顔をした。
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