龍の心臓部まで

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――――渋谷和也―――― 不意に目が覚めた。 瞼を持ち上げると、視界が霞んでいる。 確か、レオンと戦っていたはず? あの後、どうなったんだ? 俺は今の状況を思い出して、慌てて体を起こした。 「目が覚めたか」 俺の目の前には椅子が置いてあり、そこには女性が座っていた。 思わず見とれてしまうほど美しい女性。 しかし、女性は疲労感に満ちている印象だった。 「渋谷和也だな?」 そう訊かれ、俺は声で返答せずに黙って頷いた。 「お前はホワイトマジックの天草四郎の瞬間移動でここに来たんだ。覚えているか?」 「何となくですが……」 今度は声に出して返事をした。 俺は布団で寝ていたみたいだ。 自分の横には光刀が置かれている。 あれだけの重傷を負ったのに体のどこにも痛みを感じない。 体を見ると傷が消えていた。 どうなってるんだ? 見渡せば、大きなテントの中に居るようだった。 ここはどこだ? 女性は椅子から立ち上がると、テントの出口に向かって歩きながら口を開いた。 「私の名前はシャルアネットだ。今からお前は私の事をシャルアネット様と呼べ。ついて来い」 そう言うと、シャルアネットと名乗った女性はテントから出ていってしまった。
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