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あの門が遠く感じたわけは一つだ。
距離の問題じゃない。
あの門だけは絶対に通さないという、どこからか意思のようなものを感じたからだ。
美沙はその事に気が付いていない。
そいつの実力が圧倒的に上だからこそ堪えきれない部分があったんだ。
「美沙!」
呼びかけると、美沙は茫然とした様子でこっちを振り向くが、それでは既に遅いという印象だった。
圧倒的な速さで美沙に忍び寄る影。
明らかに脅威が迫ってきていた。
俺は能力を発動させたままの状態で、その影と美沙の間に入り込み爪を構えた。
脚力が優れているおかげで、何とか間に合った。
防御して、その後に一気に攻撃を仕掛けてたたみ込む。
しかし、そんな余裕があったのも束の間だった。
美沙と、その影の間に入った直後から、死神に囁かれているような気がした。
全身に立つ鳥肌と寒気。
この影に対して、どうするのが一番良いだろう。
既に避け切れないと思った俺は、相手が迫ってきた瞬間に上手く攻撃をいなす事にした。
それでも相手と接触した時に感じたのは、後悔の二文字だった。
構えていた爪の腕にひびが入り、一瞬にして体ごと弾き飛ばされた。
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