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自分の力を最大限に維持したまま、分身を作れる能力なんて聞いた事すらない。
これまでに経験のない圧倒的な能力を前に、俺は完全に怯んだ。
こんな能力が存在するのか……?
スキルインジェクションなのか、エンプティ―インジェクションなのかとかそういう次元じゃない。
そんな能力を手にしたとしても、それに追いつける体内エネルギーが無ければ意味がないからだ。
無限にも思える体内エネルギーに、俺の心は折れ掛けていた。
杏奈と美沙も、この状況を見て足下がすくんでいる。
どうすればいいんだよ。
頭の中で描かれていく戦局。
死神の力を使って一体のイエスを倒したとしても、再び増殖されるのが見えている。
全てのイエスを同時に倒す事なんて、今の俺には到底そんな力はない。
諦めるしかない。
諦めて殺されるしかない。
思わずそう考えてしまうほど、一瞬にして絶望的な状況は作り出された。
でも、それじゃいけない。
それなら、このまま突っ込んで何とか二人を逃がした方がマシだ。
全く意味がない死よりは、意味のある死で終わりにしたい。
6人の気を引きつけて、杏奈と美沙には逃げてもらう。
「杏奈、美沙! 龍の心臓部まで走れ!」
言葉を発すると同時に、俺は6人のイエス目がけて走り出した。
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