龍の心臓部まで-2

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自分の力を最大限に維持したまま、分身を作れる能力なんて聞いた事すらない。 これまでに経験のない圧倒的な能力を前に、俺は完全に怯んだ。 こんな能力が存在するのか……? スキルインジェクションなのか、エンプティ―インジェクションなのかとかそういう次元じゃない。 そんな能力を手にしたとしても、それに追いつける体内エネルギーが無ければ意味がないからだ。 無限にも思える体内エネルギーに、俺の心は折れ掛けていた。 杏奈と美沙も、この状況を見て足下がすくんでいる。 どうすればいいんだよ。 頭の中で描かれていく戦局。 死神の力を使って一体のイエスを倒したとしても、再び増殖されるのが見えている。 全てのイエスを同時に倒す事なんて、今の俺には到底そんな力はない。 諦めるしかない。 諦めて殺されるしかない。 思わずそう考えてしまうほど、一瞬にして絶望的な状況は作り出された。 でも、それじゃいけない。 それなら、このまま突っ込んで何とか二人を逃がした方がマシだ。 全く意味がない死よりは、意味のある死で終わりにしたい。 6人の気を引きつけて、杏奈と美沙には逃げてもらう。 「杏奈、美沙! 龍の心臓部まで走れ!」 言葉を発すると同時に、俺は6人のイエス目がけて走り出した。
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