誰か一人が……-2

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俺は小さい頃に河原に捨てられてて、その頃からずっと施設で暮らしてきた。 野良猫と同じように、段ボールに入った状態で捨てられていたそうだ。 見つかったのは雨が降る夜の事で、泣き声を上げていた事で誰かが発見してくれたらしい。 生後、数か月ほどである事が後から病院で判明した。 何の情報がない為、自分の誕生日も分からないし、両親の顔も分からなかった。 名前も分からない捨て子だった為、施設を経営しているおやじが俺の名前を考えてくれたんだ。 どんな時にも希望の光があるように。 そんな理由でヒカルという名前にしたらしい。 それから俺は施設でずっと育ってきた。 そうだ。あれは……ちょうど高校に入学した時ぐらいだな。 両親がいないとはいえ施設の中で暮らしてきた俺は、今、考えるとまだまだ子供で、とてもじゃないが外の世界で一人で生きていく事なんて考えもしなかった。 でも、18歳になれば、施設を出て1人で生きてかなければいけない。 あと3年もしたら、自分ひとりで生きていかなきゃいけない事に対して怖いと思っていたんだ。 もう誰も手を差し伸べてくれなくなるんじゃないかって。 そんな時に、両親を交通事故で無くした渋谷和也が施設に入ってきたんだ。
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