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イエスは新たなコピーを作り出す事はしなかった。
今にも死にそうな2人のイエスに、大剣を振るとあっさりと息の根を止めた。
自分で自分を殺す光景に違和感を覚えながら、俺は神刀を構え直す。
2人の自分にトドメをさしたイエスは、冷涼な表情を浮かべて俺たちの方を見てきた。
渋谷和也の「始まるぞ」の言葉は、おそらくここからなんだろうという事を悟る。
こいつには未来が見えている。
2人の自分を殺したイエスから放出される体内エネルギーが、一瞬にして体の中にとどめられる。
その直後、目を疑う光景が映し出された。
イエスの両腕が破裂するように膨らむと、次に両足が膨らみ、そして胴体が大きくなり始める。
まるで、RPGの世界のラスボスが変形するような光景。
これまで体の外側から放出されていたはずの体内エネルギーが、体の内側で凝縮されていく。
全身が巨大化すると共に、イエスの顔も大きくなり、人間とはかけ離れた異形の姿が作り出された。
渋谷和也は、そんなイエスの姿を見ながらもこんな言葉を口にした。
「別の誰かになる能力はこの為だったのか……。体を変形させる能力……」
イエスの膨大な体内エネルギーが体の中でおさまるほどの肉体。
俺は、その力を見て、絶望という言葉を知った。
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