506人が本棚に入れています
本棚に追加
無様にも地面に手をついて、追い詰められていたはずのイエスは、不敵の笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。
「いやー、かなり良い線いってたと思うぜ。実際に俺の能力の弱点が移動距離に関係しているって気がついたのは、お前が初めてかもしれないな。レッドキングダムの王でさえ、その事には気が付かなかったと思うし」
既に勝ち誇ったかのようなイエスは、空に舞っている大剣に向かって手を伸ばした。
すると、大剣は吸い寄せられるようにしてイエスの手元まで飛んでくる。
イエスは大剣の柄を掴むと、納得したように何度か頷いた。
大剣を自由に操れるのか?
予めコピーしていたものを操作していた?
いや、そんな感じではなかった。
それなら、あれだけの追い詰められた表情はしないはず。
今、考えると、間に合うか間に合わないかのスリルを楽しんでいるような感じもした。
くそっ。
血は止まったが、身体を動かす事がほとんどできない。
致命的な傷を負ったんだから、当然のことか。
「まさか、あの出来損ないの弟に助けられるとは思わなかったな」
イエスは、大剣を見ながら独り言のようにブツブツと何かを言っている。
「まあ、最後くらいは役に立ってくれたってことか」
その直後、イエスは3人のコピーを作り出した。
絶望が目の前に広がった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!