誰か一人が……-2-2

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その瞬間、今度は反撃してくる事もなく、イエスは大きく跳んで身を退いた。 俺はその反応を見て、慌てて切っ先の向きを変えて攻撃を中止する。 そのまま勢いよく地面に着地した。 危ない。 危うく地面に攻撃をそのまま放つところだった。 一度、使ってしまえば、この力は一気に飛散していく。 こんな事で無駄にしてしまえば、俺に勝機は無くなるだろう。 少し荒くなった息を整えながら、俺は改めてイエスの様子を観察してみた。 身を退く事。この戦いでイエスが初めて見せる行動だった。 我を失ってはいるが、危機本能みたいなものなのだろうか? 明らかに、イエスは逃げるようにして距離をとった。 『別の理由もあるかもしれない。もしかして、こっちの力が自然と散って自滅するのを待っている可能性もある』 確かにそうだな……。 刀がどんどん重たくなってきているし、刀身に集まった力は沸騰するように少しずつと暴れはじめている。 意外と冷静じゃないか……。 そんなイエスを見て、気持ちが余計に焦っていく。 『ヒャハハハハハハハ! 聞こえるか! そこのクズ野郎と試作品!』 「――――!」 『この声はてめえらにしか聞こえてねえ! よく聞きやがれ!』 聞こえてきたのは、ヒカルが持っているはずの神刀の声だった。
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