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小さい頃の私は改札を通るときに背筋を伸ばしていた。
握りすぎて湿った切符。
駅員さんから受け取ったあと、大事に大事にしまった。
定期も初めは緊張してたっけ。
小さな街に降りる人は、ぽつりぽつり。
大きなバックで出ていった隣のお兄さんは戻って来なかった。
高校を出たら、多くの若者は出ていく。
でも私はこの街が好き。
「まだ読んでるの」
駅員さんが笑う。
駅舎を掃いている。
「この陽の当たりかたが好きなんです。暗くなって見えなくなるまで、もう少しだけ、って」
「そう言って随分悪くなったんだろ」
眼鏡をつつかれる。
あ、そっか。
もう、仕事の終わる時間。
「もうすぐ制服、着なくなるんだな」
切符の代わりにずっと握っていたいものが出来た。
背伸びして囁く
「ねえ、春になったら手を繋いで乗りたい」
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