0人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと逢えたよ――
くたびれた駅の待合室。
突然そう声を掛けられた少女は、読みふけっていた本を膝の上に置き、ふと顔を上げる。
見た事のない少年――誰?
「君を迎えに来たんだ」
五年前の夏――
この駅で人が電車にはねられる事故があった。
以来、事故が起きた同じ日に、少女は毎年現れる。
「君はもう……死んでしまっているんだよ。……記憶がないままに、ずっと彷徨っているんだ」
死んでる? 何の事? ――少女は怪訝な顔をする。
「君はたぶん……これを探しに来たんじゃないかな?」
キラリ、少年が出した右手から何かが垂れる。
――あっ、それはっ!
「そう、これは君の宝物。……僕が君に贈ったペンダントだよ」
「あなたは誰なの?」
五年前の今日、君と心中したんだ。
このペンダントをお互いに握りしめ、永遠の愛を誓って一緒に電車に飛び込んだんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!