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「ねぇねぇ、沙夜(さや)!昨日の特集見た!?」
穏やかな日常の1コマ。ただただ、同じことを繰り返して送るだけの、平和な日々。
今日も、私は一般の女子高生らしく、学校生活をつつがなく送るつもりだった。
「いきなりどうしたの、水月(みづき)」
私が座る席の目の前に仁王立ちするかのようにやって来たのは、私の親友である水月。
彼女は、オカルト話に目がない。大抵、私の前にこうしてやって来るのは、「昨日の心霊特集が!」とか、「今日は恐怖映像がある!」と言いに来る場合の時が多い。
「『どうしたの?』じゃないわよ!昨日さ~、陰陽師特集があってね!」
今日はどうやら、いつもの心霊特集感想ではないようだ。
「陰陽師特集?何それ」
「だからそのまんま。陰陽師についての特集だって。その特集の中でね、面白いことやってたのよ」
いつになく、アーモンド形の瞳をキラキラさせて、私に話してくれる。
「陰陽師の人たちって、見習い修行する時にね、桶に水張って、その中をじーっと見るだけの修行するんだって。何でだと思う?」
水を張った桶の中を…じーっと?
私は、自分が桶に水を張って中を覗き込む姿を頭の中で思い描く。
水面に映るのは、鏡で見飽きた自分の顔だけだ。目鼻立ちが別段整っているわけでもなく、セミロングの黒髪をいつも鬱陶しそうに掻き分ける、どこにでもいそうな、平々凡々な女子高生。
鏡に映る平凡な自分と唯一違うのは、水鏡の場合は、空気の振動とともに、水面の中の自分がゆらゆら揺れることぐらいだ。
「わかんないな。何で?」
降参、とおどけるように、両手を軽く挙げて水月に答えを求める。
すると、待ってましたと言わんばかりに、水月はずいっと私に顔を近付けた。
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