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朝から頭がボーッとする。
仕事中に寝てしまわないか心配だ。
「金城さん、何か調子悪そうですね」
隣の席の上原が、心配そうに声をかけてきた。
「ちょっと昨日、夫婦喧嘩をしてしまってね」
「へぇ、金城さんは怒るタイプじゃないのに、珍しいですね」
「うん、喧嘩というより一方的な弾圧かな」
自然と苦笑いが出てしまう。
「原因は何なんですか?」
「迷い犬を飼うかどうかで、揉めてね」
「迷い犬?金城さんとこは、一軒家だから飼ってもいいんじゃないですか?」
「そんな簡単に言うなよ。誰が面倒をみるとか、いろいろあるじゃない」
「それもありますけど。保健所に連れて行ったら、間違いなく処分されるじゃないですか」
「うん」
「救える命なら、救った方がいいですよ」
「うーん」
「まあ、私の主観ですから気になさらずに。いろいろ家族の協力がないとペットは飼えませんから、話し合うしかないですね」
* * *
夕食後に、家族3人で話し合うことにした。
「今日は、犬のことで話をしようかと思う」
「お父さん、あの犬飼うんでしょ?早く名前を考えようよ」
「いや、まだ飼うかどうかは決まってないんだ」
「そうよ、翔太。犬を飼うのは大変なことなのよ」
「まず、玄関にいる犬のことだが、首輪をつけているから、どこかで飼い主が探しているかもしれない。俺としては、とりあえず家で預かって。飼い主が出てこなければ、正式に引き取りたいと思っている」
「簡単に言うけど、誰が面倒を見るの?仕事ばっかりしているあなたに犬の世話ができるの?」
「それは、そうだけど。翔太や由香里の協力でみんなで家族として迎えたいなと」
「あなたは仕事、翔太は学校に塾で、結局面倒を見るのは私になるのよ。その事をわかってる?」
「お母さん、僕もちゃんと面倒をみるよ。だから飼おうよ」
「もし、うちで飼わないとなると、あの犬は保健所で処分されるだろう。救える命は救ってやりたいんだ」
影響されやすいって怖い。
上原の言っていたセリフが自然と出てきてしまう。
「そんな話されたら、反対できないじゃない!」
昨日にも増して、由香里の顔が怖い。
「じゃあ、飼っていいの?」
「仕方ないわね。二人でちゃんと面倒をみるのよ」
由香里は諦めた顔をして言った。
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