第一部―about a man―

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「あなたって本当に素敵ね」  目の前に座る女が言った。  酒のせいか目が潤み、黒目がちな目がさらに大きく見える。  頬と唇を真っ赤に染めて、彼女は私の全身を見回した。  そうして感嘆のようなため息をつき、また言う。 「あなたみたいな男の人、初めてよ」  その言葉は私の自尊心を多いに喜ばせた。  同時に、私にとっては感慨深い一瞬でもあった。  長かった。  しかし、それもようやく報われるのだ。  あの日からもう1年近くも経つのだ。  あの悪夢のような日から。
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