第一部―about a man―

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 1年前、私は人生で初めて一目惚れというものを経験した。  出会いは運命的だった。  仕事帰りの駅、その日私は疲れのあまり周りを良く見ていなかった。  疲れた足を引きずりホームまで行くと、ちょうど発車のベルが鳴り出した。  一刻も早く家に帰りたかった私は、最後の力を振り絞り、走り出した。  しかし運悪く、というべきか。  人にぶつかってしまったのだ。 「きゃっ」  か細い悲鳴がホームに響いた。 「すみません!大丈夫ですか!?」  転んだ相手にそう声を掛けると、女性は顔を上げ、私を仰ぎ見た。  電流が走ったとはこの事だった。
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