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確かめたい。
あれは本当に事故だったのか。
それとも君が。
でも足が言うことをきかない。
まるで吸い寄せられるように、勝手に橋の向こうへと歩き出す。
待て、待ってくれ。
まだ聞きたいことがあるんだ。
無理やり首をねじ曲げ振り向いた俺の目の前で、彼女がパッと顔を上げる。
泣いてはいなかった。
震える肩は、笑いを堪えるためだったのだ。
「さぁ、これでいいわ! 迷わず成仏なさいね。あなたの遺産は、ちゃんと私が使ってあげるから。本当に感謝してるのよ、あんなにたくさん遺してくれて。ありがとう、じゃあね!」
君は今度もまたそうやって、俺に背を向けるのか。
振り返らずに、立ち去るのか。
―――舐めるなよ。
俺は渾身の力を込め、立ち止まろうと足掻いた。
足は勝手に進もうとする。
体は何とか戻ろうとする。
何かが引きちぎれるような感覚。
構うものか。
俺はまだ、彼女に用がある。
気がつけば、俺の足だけが橋を渡っていく。
足を失くした俺は風のように彼女の元に辿り着き、その手をそっと握る。
振り向いた彼女の顔が、恐怖に凍りつく。
『さぁ、ゆっくり話をしようか』
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