第1章

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「また、此処にいたの」 呆れたような悲しいような顔を浮かべながら、友人は呟く。 「此処は、あいつの場所だから」 此処で待ってたって、戻って来ないのはわかってるんだけど。もう逢えないことは、嫌というほど思い知ってる。 「あんた、本読むのなんて苦手なくせに」 病床にいた彼が、わたしに遺した唯一の物は、一冊の本だった。 わたしが本読むの苦手なこと、知ってたのに、なんで、なんて思いながらも読まない訳にはいかないじゃないか。 せめて、手紙とか他にやり方なかったのか、なんて言葉の不器用だった彼には無理か。 最後の1ページには気が付いたときには涙の染みができていた。 最後に書かれてたのは、 幸せになれよ、という彼からのメッセージ。 ばか、幸せになってやるわよ、泣きながら笑ったそんなわたしの髪をふわっと彼が揺らした気がした。 fin
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