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恐れていた事が起きた。
こいつ、彼女さんにキスしてやがる。
しかも、告白する前だから、実質的には付き合う前に。
これは大問題だ。
直すべきは文章ではなく、お前の順序観念だと言ってやろうか。
弟を見た。
顔を真っ赤にして俯いている。
そうだよな、そうなるよな。
じゃあ何で俺にこれを見せようと思ったんだ。
「まぁ……細かい直しはあるが、それは帰ったら赤ペン入れてやる。」
「はい……」
「正書する時は、このAさんっての、全部直しておけよ。」
「はい……」
「あと、彼女さんの心が広くて、本当に良かったな、お前。」
「はい……」
「あと……」
そう、最も気になるのは、
「彼女さん、喋れないのか。」
「……うん。」
「そうか……そう、なのか……」
聴覚過敏症。
これがどんな病気かは名前から想像がつくが、
治ることはあるのだろうか。
弟の文章からは、彼女の愛らしさ、可愛らしさが滲み出ている。
恋は盲目状態なのかもしれないが、まぁ可愛い人なんだろう。
「不憫だな……」
口に出すつもりはなかったが、つい出てしまった。
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