#06 * 春雪

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「でも、おかげで、彼女と出会えた。」 「あっはは。雪らしくない、随分ポジティブだな。」 「だって、本人が気にしない、気にしないって言うから。」 「そっか……」 まだ見ぬ弟の彼女さんを想像してみる。 華奢で、気高くて、繊細で、とても強い女の子。 ならーー 「あのページ、真ん中の部分はカットして、お前の感想を入れよう。」 「春兄?」 「あと、彼女の表情がどう見えたかを、もう少し分かりやすく。  彼女の口の動きを追う感じを、もう少し出して表現しよう。  ここは、カット。代わりにお前の回想を入れて……」 「春兄?」 彼女がこれを読んだ時、お前のことをもっと分かってもらえるように。 そして、お互いの気持ちがどれくらい伝わっているのか、 彼女が確認できるように。 「いい作品にしような。」 「……うん。」 「それで、大切に思える作品にしよう。」 「うん。」 「俺も、協力するから……」 「春兄……ありがとう。」 「うん。」 これはただのプレゼントじゃない。 確かめた方がいいことを、二人が分かりあう為に、必要な作品なんだ。 そして俺の大事な弟が、 好きな人と、楽しく、幸せに、過ごせたらいい。
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