#06 * 春雪

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ーーーーー お盆も終わり、残暑見舞いが届く頃、 俺と弟は買い出しに出かけていた。 両親は毎年恒例の結婚記念で一週間旅行に行っている。 明日はやさいの日。 雪の彼女さんの誕生日を、家で祝うことになっている。 食材はバッチリ。プレゼントも、昨日無事に完成した。 後はメンツが揃うのみだ。 「う……ケーキって、色々種類がありすぎて、迷う。」 「苺のショートケーキとかでいいんだよ。」 「本当に? ベタすぎない? チョコとか、チーズもあるけど。」 「いいんだよ。女の子は大好きだろ、苺とかクリームとか。」 「じゃ、じゃあ、これを一つ、ください。」 『ローソクとプレートはいかがなさいますか?』 「えっと、じゃあローソクを14本。プレートは、これで。」 弟は渡された紙に【 HAPPY BIRTHDAY UTAKO 】と書いて、 店員にいそいそと渡した。 いよいよ、明日。 何だか俺まで緊張してきた。 「初めまして、雪将の兄の、春雪ともうします」 固いな……とはいえ、喋れない女の子を相手に、 どうやってその場を持たせればいいんだ。 こちらがひたすらに喋っても、相手の話が聞けず失礼だし、 だからと言って聞く側に回りすぎると、墓穴を掘りそうだ。 筆談用に紙とペンを用意したが、雪はあまり使わないと言っていた。 口の動きを見ればわかる、と言っていたが、 それはあくまで「お前は」の話で、俺は経験もないし、自信もない。 相当慎重に対応しなければ。 ーーーーー
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