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当日。
雪は彼女さんを家まで迎えに行っている。
俺は一人残されて、玄関前の廊下を行ったり来たりしていた。
リビングの掃除は完璧だし、ケーキもお菓子も飲み物も用意した。
プレゼントは一昨日の段階でプリントアウトして、
綺麗な厚紙を表紙に当てがい、本らしく仕上がってるし、
マスクの準備も出来ている。
何故俺が家の中でマスクをしているかというと、
雪に散々念を押されたからだ。
「春兄、小声でだからね。小声。」
「小声って、どれくらい?……これくらい?」
「それくらい、かな……僕と同じくらいの声の大きさで。」
「それがよく分からないんだけど。」
「まぁ、とにかく小声なら大丈夫だから!小声で。」
万が一「あっ!」とか「おっ!」とか声を張ってもいいように、
マスクを二つ重ねてつけているというわけだ。
息苦しい……
でも、物語に書いてあったように、大声を出してしまい、
彼女さんが苦痛に頭を抱え出したりしたら……
俺は息苦しいじゃすまない。
というか、これは今更なんだが、
彼女さんは今日、うちに両親がいないことを知ってて来るのか?
一応男二人しかいない空間に、女一人で乗り込んで来るんだろう。
不安じゃないのか?
勿論、俺によからぬ考えなんてない。雪の方は知らんが……
あれ。この状況、本当に大丈夫なのか?
まぁ、今更すぎるにも程があるが……
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