#06 * 春雪

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当日。 雪は彼女さんを家まで迎えに行っている。 俺は一人残されて、玄関前の廊下を行ったり来たりしていた。 リビングの掃除は完璧だし、ケーキもお菓子も飲み物も用意した。 プレゼントは一昨日の段階でプリントアウトして、 綺麗な厚紙を表紙に当てがい、本らしく仕上がってるし、 マスクの準備も出来ている。 何故俺が家の中でマスクをしているかというと、 雪に散々念を押されたからだ。 「春兄、小声でだからね。小声。」 「小声って、どれくらい?……これくらい?」 「それくらい、かな……僕と同じくらいの声の大きさで。」 「それがよく分からないんだけど。」 「まぁ、とにかく小声なら大丈夫だから!小声で。」 万が一「あっ!」とか「おっ!」とか声を張ってもいいように、 マスクを二つ重ねてつけているというわけだ。 息苦しい…… でも、物語に書いてあったように、大声を出してしまい、 彼女さんが苦痛に頭を抱え出したりしたら…… 俺は息苦しいじゃすまない。 というか、これは今更なんだが、 彼女さんは今日、うちに両親がいないことを知ってて来るのか? 一応男二人しかいない空間に、女一人で乗り込んで来るんだろう。 不安じゃないのか? 勿論、俺によからぬ考えなんてない。雪の方は知らんが…… あれ。この状況、本当に大丈夫なのか? まぁ、今更すぎるにも程があるが……
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