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「さぁ歌子さん、ここに座って!なに飲む?」
「烏龍茶、林檎ジュース、サイダー、紅茶、珈琲、何でもあるよ、姫。」
<じゃあ こうちゃ で>
「了解しました。僕が用意するよ。春兄は?」
「俺も紅茶でいい。」
凄い! 今の見た?
彼女さんが喋る時、雪が口元を凝視して読み取っているのが分かる。
メチャクチャ難しい事のように思えるかもしれないけど、
案外そうでもない。
前後の文脈と、表情、あとは口の動きと少し吐き出される吐息。
これなら、俺にもできそうだ!
「じゃあ準備は雪に任せて、姫、俺たちはトランプの用意をしよう。」
<はい えっと なにを すれば いいですか>
「なにをするかによるよねぇ……なにしたい?」
<しちならべ とか どうでしょう>
「し…ち並べね!はいはい!じゃあ半分ずつで切って、配ろう。」
<あの おにいさん>
「ん?あぁ、春でいいよ。あと、敬語は厳禁ね!」
<春くん>
「何でしょう?」
<マスク とって だいじょうぶ だよ>
「いや、それは…俺、慣れてないから、声のトーンが分からなくて。」
<だいじょうぶ です おにいさんのこえ だいじょうぶです>
「それは、耳栓とヘッドセットがあるから?」
頷き。
<春くんの こえしつは 雪将くんと おなじ だから>
「そっか。うんうん。」
全部は読み取れなかったけど、まぁ、マスクは取っておくか。
これは、俺や雪が下を向いてたら、会話にならないな……
トランプは失敗だったかもしれない。
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