#06 * 春雪

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「さぁ歌子さん、ここに座って!なに飲む?」 「烏龍茶、林檎ジュース、サイダー、紅茶、珈琲、何でもあるよ、姫。」 <じゃあ こうちゃ で> 「了解しました。僕が用意するよ。春兄は?」 「俺も紅茶でいい。」 凄い! 今の見た?  彼女さんが喋る時、雪が口元を凝視して読み取っているのが分かる。 メチャクチャ難しい事のように思えるかもしれないけど、 案外そうでもない。 前後の文脈と、表情、あとは口の動きと少し吐き出される吐息。 これなら、俺にもできそうだ! 「じゃあ準備は雪に任せて、姫、俺たちはトランプの用意をしよう。」 <はい えっと なにを すれば いいですか> 「なにをするかによるよねぇ……なにしたい?」 <しちならべ とか どうでしょう> 「し…ち並べね!はいはい!じゃあ半分ずつで切って、配ろう。」 <あの おにいさん> 「ん?あぁ、春でいいよ。あと、敬語は厳禁ね!」 <春くん> 「何でしょう?」 <マスク とって だいじょうぶ だよ> 「いや、それは…俺、慣れてないから、声のトーンが分からなくて。」 <だいじょうぶ です おにいさんのこえ だいじょうぶです> 「それは、耳栓とヘッドセットがあるから?」 頷き。 <春くんの こえしつは 雪将くんと おなじ だから> 「そっか。うんうん。」 全部は読み取れなかったけど、まぁ、マスクは取っておくか。 これは、俺や雪が下を向いてたら、会話にならないな…… トランプは失敗だったかもしれない。
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