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先に切って配り終えた俺は、姫の顔をじっと見ていた。
いつ喋り出してもいいように、備えて。
ずっと見ていると、ふと、この子を知っているように思えてきた。
歌子、という名前には覚えがない。
忘れてしまったのかもしれない。
でも、俺は確かにこの子を知っている気がする。
いつ、どこで、会ったんだっけ……
この頬に影をさす長いまつ毛、白い肌、凛とした顔立ち、
確かに、見覚えがあるんだけど……
<春くん>
「な、何でしょう?」
<くばり おわったよ>
「あ、あぁ、はいはい。雪! 早くしろ!」
「はーい。今行く。」
雪も姫も楽しそうにトランプで遊んでいる。
その無邪気な笑顔にも、やっぱり見覚えがある。
何で、思い出せないんだ……
それにこの子は、俺の事を知らないみたいだし、
雪も昔の知り合いだなんて事は言ってなかった。
俺の気のせいなんだろうか。
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