#06 * 春雪

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「え…? えぇっ! 僕が書くの?」 「それが一番確実だろ。  絶対に読んだことなくて、大事にして貰えるぞ、きっと。」 「で、でも、内容が伴ってないと、読んでもらえないよ。」 「雪が書いた物語だぞ。どんな内容でも、読んでくれるさ。」 「僕……そういう黒歴史、作りたくないんだけど……」 「もう既にあるだろ。お前の部屋に、黒歴史の数々が。」 「僕のコレクションを黒歴史呼ばわりしないでよ!」 「似たようなもんだろうが……じゃあアクセサリーでもあげるか?  ぬいぐるみとか、タオルハンカチとか、女子の好きそうなもので。」 「んんん……好みが全くわからない……」 弟はしゃがみ込んで、頭をブンブン振った。 「どうしよう……万策尽きた。」 「待て待て、ここ外だから。今日は帰って、また考えよう。」 「うん……」 そうは言っても、弟が何かしら書くのだろうと予想はついた。 弟の部屋を物色していた母親が(本人曰く掃除らしいが)、 雪の黒歴史の数々を見つけているのを、俺は知ってる。 それらは主に、ザックリと書かれた短編小説で、 いかにも「これ、アニメ化希望です!」って感じの、 セリフの多い、映像を意識したものばかりだったが、 文章を書くことに慣れていない人間ではない。 短編が書けるなら、長編だって書けるだろうし、 むしろ短編でも、彼女は喜んでくれそうな気がした。 「物語か……」 「プレゼントっていうのは、何であれ手作りが一番嬉しいもんだ。」 「手作り……誕生日プレゼント……」 ほら。 少しはやる気になってきた。
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