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「え…? えぇっ! 僕が書くの?」
「それが一番確実だろ。
絶対に読んだことなくて、大事にして貰えるぞ、きっと。」
「で、でも、内容が伴ってないと、読んでもらえないよ。」
「雪が書いた物語だぞ。どんな内容でも、読んでくれるさ。」
「僕……そういう黒歴史、作りたくないんだけど……」
「もう既にあるだろ。お前の部屋に、黒歴史の数々が。」
「僕のコレクションを黒歴史呼ばわりしないでよ!」
「似たようなもんだろうが……じゃあアクセサリーでもあげるか?
ぬいぐるみとか、タオルハンカチとか、女子の好きそうなもので。」
「んんん……好みが全くわからない……」
弟はしゃがみ込んで、頭をブンブン振った。
「どうしよう……万策尽きた。」
「待て待て、ここ外だから。今日は帰って、また考えよう。」
「うん……」
そうは言っても、弟が何かしら書くのだろうと予想はついた。
弟の部屋を物色していた母親が(本人曰く掃除らしいが)、
雪の黒歴史の数々を見つけているのを、俺は知ってる。
それらは主に、ザックリと書かれた短編小説で、
いかにも「これ、アニメ化希望です!」って感じの、
セリフの多い、映像を意識したものばかりだったが、
文章を書くことに慣れていない人間ではない。
短編が書けるなら、長編だって書けるだろうし、
むしろ短編でも、彼女は喜んでくれそうな気がした。
「物語か……」
「プレゼントっていうのは、何であれ手作りが一番嬉しいもんだ。」
「手作り……誕生日プレゼント……」
ほら。
少しはやる気になってきた。
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