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田舎に向かって車を走らせているから……
蝉の声がどんどん大きくなってくる。
そして、とにかく暑い。
「母さん、クーラーの温度、下げてくれ。」
「もう限界まで下げてるわ。ごめんだけど、ちょっと我慢して、春くん。」
「雪は何をやってる。移動中に物を書くのはやめなさい。」
「お父さん、揺らさないでよ……書けない。」
「書くなと言ってるんだ!そんな事ばかりしてるから目が悪くなるんだ。」
「父さん、ちょっと多めに見てやって。宿題が終わらないみたいなんだ。」
「あら春くん、今年は手伝ってあげないの?
お父さんも、宿題ならいいじゃない。仕方ないでしょ?」
「……」
雪はあの日から何かを書いては捨て、書いては捨てしていたが、
最近やっと物語が軌道に乗ったようだった。
「僕たちの物語を書いてみるよ。」
「それって、実話ってこと?」
「そうなるのかな。それで、春兄に直し、お願いしたいんだけど。」
「俺がそれ読むの? 兄としてなんか気まずいんだけど。」
「火をつけたのは、春兄じゃないか。お願いだよ……自信がないんだ。」
「仕方ないな……これ、貸しだからな。」
と言って直しを引き受けたものの……
正直、本当、あまり読みたくないな。
弟の、恋愛事情。
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