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静まり返った屋内に人の気配はない。
空に手を引かれて、窓一つない暗い廊下を歩く。暫しして、カチャリ……と僅かに金属の音がした。
監視者が、私が戻ってきたのを確認して離れの唯一の出入り口に錠を掛けた音だ。
寝室の襖を開けて、薄暗い中に入る。高い位置にある、鉄格子の嵌められた窓から入ってくる緩やかな風が頬を撫でる。
「茶を持ってくる」
「ありがとう」
短く返せば、空が薄く微笑んで出て行った。
窓のある方の逆の壁に凭れるようにして座る。鉄格子越しには、雲一つない青く澄み渡った空がある。
今いる位置から、十六年ずっと見つめてきた空だ。だがそれも、あと二日で見納めだ。
悲しみはない。心は眼前の空のように静かだ。
いつものようにじっと見つめながら、空が戻ってくるのをただ待つ。
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