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学校が始まったばかりの九月初めはまだ蒸し暑さが残っている。
蝉が命の限りに啼いていてもの悲しさを感じさせていた。
学校帰り、汗を拭き拭き通りがかったバス停にセーラー服の少女が座って本を読んでいるのが見える。
一時間に一本もないバス停で小屋組みの中で静かに本のページをつらつらとめくっている。
その指の滑らかな動きに目が釘釘づけになってしまった。
豊かな長い髪、眼鏡の奥の黒くて艶やかな瞳、豊かな胸のふくらみ・・・・そこまで目が言って俺は動揺する。
『どこ見てんだ・・・///』
自分の頭にコツンと喝を入れて戒めると思いもかけない行動をとっていた。
「あの・・・・」
声が出て自分でびっくりする。なに声かけてんだ?
「暑いのに大丈夫ですか?バスまだまだですよ」
上目づかいにこちらを見た顔に心臓を射抜かれる。
”やばい・・・・かわいい”
「どこの高校ですか?ここらでは見かけない制服だけど・・・・」
「ある人に・・・・会いに・・・・きたから・・・・」
誰かに会いに来たのか?こんなとこ爺さんと婆さんしか住んでないのに・・・。
自分も両親が事故に遭っていっぺんに亡くなってばあちゃんに引き取られなかったら、ここには住んでいない。この部落で子供とか若者ってのは自分一人しかいない。
「珍しいね。若い人いないのに・・・・おじいちゃん、おばあちゃんに会いに来たの?」
「ううん、隆正クンに・・・・」
「えっ?」
すっと頬に伸びてきた手は冷たくて細い。頬をすっと撫でて儚げな少女はニコリと笑う。
「知り合い・・・だっけ?」
「忘れたの?」
「ずっと好きだったの・・・・それを伝えたくて・・・・」
いきなりの愛の告白に心臓は飛び出さんばかりに早鐘を打つ。
それは何かの警告音のように耳の中でこだまする。
「なんで?・・・・君、ダレ?」
少女はすくっと立ち上がりいきなりセーラー服のリボンを引き抜いた。
「えっ?・・・なに?・・・何してんの?」
少女は答えない。そして脇のチャックを外してセーラー服を脱ぎ捨てた。
「ちょ・・・・やめて////」
眼を隠しながらうずくまった。なんで外でいきなり裸になるの?
「他人は通らないと思うけど・・・・早く服着てっ!」
なぜか震え越えになって叫んだ。少女の革靴やスカートが揺れた形跡はない。
まだ裸のままなんだろうか。思い切ってそっと上を仰ぎ見た。
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