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微動だにしない少女は悲しそうな目でこちらを見ている。
・・・・ってか、胸・・・胸がない。
「あれ?」
「思い出した?」
少女は手を取って引っ張り上げる。
ふたりでバス停の小屋の中に立って向かい合っていると静かに風が通り過ぎた。
背は少女の方が少し高い。眼鏡の中の黒い瞳・・・・そして白い肌の上半身・・・・鍛えてはいないけど骨ばった、ろっ骨が浮き出るほど細い男の身体。
脇腹に真新しいキズ。
「このキズ・・・・つかさ?」
「やっと気が付いた」
そう云うと長い髪をパサリと取った。
柔らかくてしなやかな髪は肩口に整えられている。
まぎれもなく転校するまでクラスメイトだった中条つかさだった。
「つかさ・・・・なんでここに?それにそのカッコ」
「だって女装が似合ってるって・・・良くお前が言ってたから」
「それにしたって・・・そのセーラー服どうしたんだよ」
「ああ、これお袋の・・・・」
「普通に会いに来いよ」
「来れるわけないだろ?お前引越し先云っていかなかった」
「あっ・・・・そうか」
両親が交通事故でいっぺんに死んで・・・この山奥の田舎に転校しなきゃならなくなって・・・・自分だけが不幸のどん底に突き落とされた気がして誰にも言わずにこちらに来たんだ。
「どうしてここが分かったんだよ」
「だって伝えたいことがあったから・・・・それ伝えたくて・・・・お前のことずっと思ってたらココに来れたんだ」
「そんな変な話、信じるかよ」
「本当だよ」
「伝えたいことって・・・・」
「さっき言ったじゃん。隆正に好きって云えなかったから」
「は?何言ってんの?俺ら親友だったろ?男同士だぞ。好きって友達としてってこと?」
「違う・・・・隆正に恋してる」
「ちょ・・・///待て待て」
「いつも女みたいな顔してるって苛められてもずっと庇ってくれてた。いつも守ってくれた」
「だからって・・・・」
「それじゃ好きになるのに理由にならない?」
「なんねぇよ」
「いつかさ~言ってたじゃん。つかさなら『セーラー服とかに会いそうだな』って冗談ぽく」
「あ・・・・それ根に持ってたの?」
「そうじゃない。隆正に好かれるためならってセーラー服着て・・・あの夜、隆正の家に行ったんだ」
でも・・・・つかさがそんな恰好をしてウチに着た記憶がない。
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