第1章

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こういう時は、ベンチの下には何もいないと自分に暗示をかけて、存在を忘れた振りをすべきだと十分に理解している。 でもさあ…、 なんか、じわじわと自分が驚いていることを実感している。こう、一歩手前で冷静じゃないんだなぁとみている自分がいるような。 余裕がないのが悔しくて意地で顔を保たせているというよりは、びっくりして表情を落としてしまった。落としたこともやっと気づいた心の回転速度に、我ながら静かにため息をつく。 今、表情を探してくるから、ちょいと時間をくださいませ。 さわさわと前髪をさらっていく風に癒されながらも、だんだんと増えてくる落ち葉。 若葉から立派な葉へ、枯れて落ちる。また若葉が生え…を繰り返す頭上の木に、俺も隠されるのかなと不安になった。 「ここだけ落ち葉があるって怪しくないか…?」 ぽつりと呟くと、少なくとも見える範囲の木々が一斉に落ち葉を雨のように落としていく。 うちんちの木々がこんなにも優しい。 子供が喜ぶ葉っぱのプール中庭大が完成した頃、会長と委員長が別タイミングで現れた。
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